子育てと行動経済学

先日出席した調査会社主催のセミナーで、定性調査(消費者に行うインタビューなど)のモデレーターと呼ばれる司会進行には、行動経済学の知見が不可欠との話を聞いたので、早速関連書籍を購入しました。

行動経済学~経済は「感情」で動いている
著;友野典男

家で読書する時間が十分に取れないので、週1,2回の電車移動時に粛々と読み進めています。

そもそも行動経済学とは何でしょうか。行動経済学は、2002年に米国人2名がノーベル経済学賞を受賞したことで、世に知られるようになったそうですが、まだまだ新しい学問分野です。

一般的に知られる経済学との違いは、対象とする「人」に対する考え方にあらわれます。

一般的な経済学は、「人」が「経済人」と呼ばれる"特別な人"であることを前提としているそうです。

「経済人」がどのように"特別な人"であるかというと、「経済人というのは、超合理的に行動し、他人を顧みず自らの利益だけを追求し、そのためには自分を完全にコントロールして、短期的だけでなく長期的にも自分の不利益になるようなことは決してしない人々」1とのこと。

たぶんこの世に存在するのでしょうが、私自身はもとより、知り合いにもいません。
私の考える「人」は、健康診断の結果を気にしつつも毎晩料理を作りながらビールを飲んだり、口の達者な7歳児、4歳児と口ゲンカして負けたり、子どもの学校の提出物の期限ぎりぎりまで見て見ぬふりをしたり、そんな感じです。(すべて私自身のことですが)

「人」の初期段階である「子ども」について考えてみると、「子ども」が「経済人」の説明に当てはまると思う人はいないと思います。

そうすると、子どもの時は自由気ままにふるまう存在であるのに、成長段階のいずれかで突然(もしくは徐々に)「経済人」になるということになります。それはいつでしょうか?子育てに奮闘している方や、子どもたちの育成にかかわる方は、そんな段階が訪れないことを知っています。

何せ必死になって子育てをしている、子どもと向き合っている自分自身が、日々悩み迷い、ケースバイケースで対応しながら生きているのですから。

きっと標準的な経済学を生み出した人は、理性的な大人の中で理論を考えたんだろうなと思いました。

子育てを通して、嫌というほど「人」に向き合っている自分だからできるマーケティングがあると、感じることが出来る一冊でした。

引用文献
1 友野典男(2006)『行動経済学~経済は「感情」で動いている』光文社.

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